神様修行はじめます! 其の二
焦点の定まらない奥方の目がそれを眺める。

がくがくと震える頭。

やがて・・・


おぼろな目がふわりと笑った。


「えぇ、ほんに見事な紅葉にございまするなぁ。永守様・・・」


にこりと微笑み、月に向かって手を伸ばす。

月へ・・・月へ・・・


さぁ、月へ・・・・・



グラリと、上体が傾いた。


奥方の体が窓の外に消えた。


黒く焼け爛れた着物の裾が、花びらのように揺れて・・・



どすんと鈍い地響きの音がした。



そして・・・




もう、何ひとつ音はしなくなった。

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