神様修行はじめます! 其の二
そして気がついた。

セバスチャンさんの腕の中に、グッタリと目を閉じたお岩さんが抱きかかえられているのに。

その足元に、当主さんが横たわっているのに。

当主さんの顔色が、完全に土気色に変わってしまっているのに。


「あ・・・・・」

あたしはうろたえて、それぞれの顔を見た。

どういう事? なにこれ?

なんなの? いったい何が起き・・・?


「ジュエル様はご無事でございます。気を失っているだけでございますから」

「あ・・・セバスチャンさん。あたしてっきり、あなたは死んだと・・・」

「はい。確かに死にました。ですが・・・」

「・・・・・」

「我が当主の術により、戻ってまいりました」


確かに死んだ?

やっぱりあの時セバスチャンさんは・・・。

じゃあどうして?


「移し命の術を当主が発動させたのじゃ・・・」

治癒を受けながら絹糸が、門川君の腕の中から説明し始めた。


「己の命の残りを、死んだ者に移しかえる術じゃ」

「移し命・・・?」

「命を司る権田原の当主のみが扱える秘術じゃよ」

「そんな術の存在、僕は聞いたこともない」


治癒を続けながら、門川君が驚いたように言う。


「当然じゃ。この術は秘中の秘。歴代の当主以外は権田原の民ですら知らぬ」

「そんな秘術が・・・」

「死者を甦らせる術など、一歩間違えば大きな災いを招くからのぉ」
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