神様修行はじめます! 其の二
確かにそうだ。

死者を甦らせたいって思いは、大きな欲望だ。

暴走すれば手が付けられないほど。

誰かがどこかで死ぬたびに、欲望を持つ者によって権田原当主の命が狙われかねない。


「秘術というより禁呪じゃ。強大な術すぎて、当主本人でさえ行使の制御が効かぬ」

「そんなに・・・」

「長い歴史で、成功した例は聞かぬ。それほど難しい術じゃが・・・」

「・・・・・」

「この当主は、腕も運もあったようじゃのぉ」


じゃあ・・・。

当主さんは自分の命と引き換えに、セバスチャンさんを?


あぁ、きっと・・・。

セバスチャンさんが今にも死にそうだった、あの時に。

もうすでに、この術を使う覚悟を決めてたんだ。


「・・・お岩さんは?」

お岩さんは、その時どうしていたんだろう。

その極限の時に彼女は何を思ったんだろう。


「ふたつの命を秤にかけて、どちらも選べず・・・耐え切れずに気を失ったのじゃ」


お岩さん・・・。


お岩さんの頬に、涙の跡が見えた。

幾筋も幾筋も、たくさんの涙の跡が。

土ぼこりにまみれた顔で、そこだけが白く光って綺麗だった。


お岩さん、お岩さん、お岩さん。

どんなに辛かったろう。

セバスチャンさんの命。自分の父親の命。

どれほどまでに苦しんだのだろう。


あんまりだ・・・・・。

こんなの、あんまりだ・・・・・。
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