神様修行はじめます！　其の二
「なんで・・・？」

当主さんの土気色の顔に向かって問いかける。

死者の、もう物言わぬ人に向かって問いかける。


「なんで？　どうして？　なんでなのっ？」

「小娘・・・」

「どうしてこんな・・・！」

「命を継ぐべき民の長が、目の前で自分よりも若い者を死なせるわけにはいかぬ」

「・・・・・」

「そう、最期に言っておった」

「だからって・・・！」


だからって！

だからってこんな事が許されるの！？

こんな、こんなにもあんまりな事が！


「当主には当主の、譲れぬものがあったのじゃ」

「だからっ！？」

「じゃから・・・どうか責めるな。小娘よ」

「・・・責めてなんかないよぉっ！！」


責めてない！　責めてるわけじゃない！

当主さんの決断を責められるわけもない！

ただ・・・！


お岩さんの涙の跡。

当主さんの土気色の顔。

お岩さんを無言で抱きしめ続けるセバスチャンさんの心の内。


どうして！？　なぜ！？

どうしてこんな事にっ！！？


何に対して憤っているのか。自分でもはっきり自覚できない。

ただあまりにも、あまりにも無情な世界とその結末に、心がついていかない。

どうして？　と問いかけるより他に、なすすべがない。
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