神様修行はじめます! 其の二
「忙しくて大変でしたね」

「この命、有意義に使うと決心致しましたので」

「・・・・・」

「前当主の残りの人生を、全て頂いたわけですから」

「セバスチャンさん・・・」

「まぁ、あとどれくらいの命かは分かりませんが」

「そんな・・・」

「大酒呑みでしたからねぇ。肝臓やら何やら傷めて、短命そうなお方でしたから」


そう言って明るく笑う。

その明るさが・・・胸に痛かった。

とてつもなく重いものを背負ってしまった、この人の明るさが。



一連の葬儀はすごく盛大だった。

門川のおエライさん達も大勢が列席していた。

今回の件で、権田原の民の株は一気に急上昇したから。


門川君の覚えもめでたい権田原に、ぜひとも近づこうと擦り寄ってきているんだ。

その一癖も二癖もある連中の対応も、全部セバスチャンが請け負った。


本当に、セバスチャンさんがいなければ、権田原は利権狙いの連中に潰されていたかもしれない。

当主さんの判断は、確かに間違いなかったんだと思う。


でも、それを問答無用で任されてしまったセバスチャンさんは・・・。


なんともやり切れない。

そんなあたしの目を見て、セバスチャンさんは優しく微笑む。


「わたくしは自分の最善を、残り短い命の全てで尽くす所存にございます」

ハッキリと力強い口調で、彼はそう言い切る。


「そもそもこの命の残りが、どれくらいかすらも不確かなのですから」
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