神様修行はじめます! 其の二
人の命も、人の行く道も。

確かな答えはまるで定まっていない。

答えは遠い道の先、振り返った場所にしかない。


確かなものは、今の自分が信じて選ぶ道だけ。

精一杯生きて、ただ歩いていくだけ。


わたくしは、振り返った時になにが見えるかを楽しみに進んでいくつもりです。



「だからどうか、わたくしめのご心配などはなさいませんように。天内のお嬢様」


ぽんっ、と頭にセバスチャンさんの手が乗った。

ふわりと髪を撫でる大きな手。


当主さんの手を思い出す。

無骨で温かい手で、あたしの頭を何度も撫でてくれた手を。

優しい、優しいあの手を。


優しい人達。

苦しみにも悲しみにも負けず、人の心を慈しみ育てる人達。


どうか・・・

どうか、この人達の行く道に、少しでも多くの光が射しますように。

失った分の悲しみを、せめて紛らわせるだけの光が射しますように。


なにもできないあたしの祈りが、どうか、どこかへ届きますように。

どうか、どうか。

どうか少しでも・・・。



涙ぐむあたしの目を、微笑んで見つめるセバスチャンさん。

この人とも今日でお別れ。

お別れしなければならない。


それがこんなにも寂しくて哀しい・・・。

哀しいよ・・・。
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