神様修行はじめます! 其の二
「あらアマンダ、そんな所で何してますの?」

突然、お岩さんの張りのある声が聞こえてきた。


「とっくに帰ったと思ってましたわ。まだいらしたの?」

「え、あ・・・・・」

「早く帰らないと日が暮れますわよ?」


物悲しい、やるせない空気を一気にぶった切る、お岩さんの元気な声。

忙し気にセカセカと、ドレスの裾をつまみながら駆け寄ってくる。


「これから帰ろうかと・・・」

「あらそう? じゃあ気をつけてね? さよなら」


ビシッと片手を上げて、それじゃまた、とサッサと向こうに歩き出す。


「ち・・・ちょっとお岩さんってばぁ!」

「なんですの?」

「ちょっとあんまり薄情じゃない!?」


別れのときを迎えてるんだよ? あたし達って。

いざ、さらば~~ってヤツだよ?


一応、濃い付き合いだったよね?

ライバル心も友情も育んだ仲じゃん。

それを、「じゃ、また!」 だけ?


「もうちょっと情緒のある別れをしても、バチは当たらないんじゃない!?」

「何言ってますの? このクソ忙し・・・とても忙しい時に」

「お岩さんが忙しいのは分かるけどさぁ!」


それにしたってあんまりじゃん!

ほんと、表面上はすっかり元通りに元気になっちゃって。

相変わらずのドレス姿は健在だし。

喪に服してるって事で、ずっと最近は黒いドレスだけど。
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