神様修行はじめます! 其の二
神の末裔
あたしが門川の屋敷に帰ったときには・・・
もうすでに、いろんな事が変化していた。
門川君は、歴代当主の私室に移って生活していた。
もうすぐ正式な当主就任の儀式も行われる。
彼にかかっていた冤罪は、全て帳消しになっていた。
次期当主になるのは、もう彼以外にいないからって事もあるんだけど。
掃除係の小人さん達が、奥方の部屋から家宝の水絵巻を見つけ出したんだ。
晴れて門川君は潔白を証明した。
なんで奥方は、水絵巻を処分してしまわなかったんだろう。
自分の罪の決定的な証拠になるのに。
もしかしたら・・・
捨てたくても、捨てられなかったのかもしれない。
水絵巻は、大切な思い出を甦えらせるから。
奥方は水絵巻を使って、密かに夫に会っていたのかもしれない。
今となっては想像するより他に無いけれど。
奥方の罪は、公表される事は無かった。
門川君がそれを望まなかったから。
「それが一番いいんだ」
彼はそう言っていた。
だから奥方もお兄さんも秋風さんも・・・。
ごく普通に、当たり前に、英霊として祀られている。
あんなにも多くの出来事の全てを飲み込んで。
今はただ、静かに・・・・・。
物言わぬ墓石を見ていると、遠い過去の夢のような気がしてくる。
不思議に冷静に思い返す事ができる。
まだ、全てを消化するには時間が全然足りないけれど。
あと10年、20年、30年経ってこの場所に立つ時には・・・
今とは違う感情でいられるのだろうか?