幕末トリップガール~陰陽少女と新撰組~
しかし残酷にも、その現実はやってきた。





「……小野寺!」


ある日、小野寺は土方に呼び止められた。


「どうした?そんな慌てて」

「山南さんを見なかったか?」






嫌な、予感がした。





「山南さん…?いや、別に」


「…………置き手紙があったんだ」




そう言って土方が見せた紙には、丁寧な字で「江戸へ行ってきます」と記してあった。



「こんな時間から、江戸…?」

「そんなこと、有り得ないだろ」




つまりこれは、






「脱走だ」




土方の感情のこもっていない冷たい声が、屯所内に響いた。



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