幕末トリップガール~陰陽少女と新撰組~
僕はみんなが、大好きでした。
「さぁ、いきますかぃ」
右手に刀を握る。
沖田総司は、不敵な笑みを浮かべた。
――――――――――
「小野寺、先を急ぐぞ」
土方が階段を駆け上がる。
「…あぁ」
「今は落ち込んでいる場合じゃねえ」
土方は、小野寺を見た。
「俺たちのこの行動には、何万という奴らの命がかかっている。振り返るな。前のみを見ろ。前へ進むんだ」
土方と沖田は、もう随分と長い付き合いだということは近藤から聞いていた。
壬生浪士組を結成する前、道場で知り合ったらしい。
沖田をあそこに一人で残してしまったことに対して、土方だって辛いものがあるはずだ。
むしろ、小野寺よりも思うところがあるかもしれない。
なのに彼は、振り返らない。
前だけを見ている。
「………………分かった」
小野寺は階段を上る足を早めた。