虎猫ゆうゆ。
落ちたお母さんの体から血が
じわじわ流れた。
足がねじれて血で光ってた。
車から人間が出てきて、
お母さんを見下ろした。
「お母さんに手を出すなっ」
お兄ちゃんが毬のように
人間のとこにとびだす。
人間はお兄ちゃんを蹴り飛ばした。
小さなお兄ちゃんは宙を舞う。
お兄ちゃんの口からか細く
血が流れ、それきり動かなくなって。
横で妹が怯えた泣き声をあげた。
それに気がついた人間が、
こっちに来た。
怖い。たすけて…
私は声を潜め、
電柱の陰にじっとした。
コトリ、コトリ。
足音が止まって。
「おねえちゃん!嫌だよう!
怖いよぉ…!」
妹が人間に連れ去られた。
人間は私には気がつかず
小さな妹の子猫だけを捕まえ、
また車に乗り込む。
車のライトがパッと光って
おかあさんを照らし出す。
おかあさんは目をカッと
見開き、恐怖に引き攣った顔で
動かなくなっていた。
車が走り去る。
再び辺りは静寂に包まれて。
私はお兄ちゃんの傍へ行った。
「お兄ちゃん?どうしたの…」