幸福感
恋人がバンドマン



三時限目終了のチャイムが鳴った。

ポーとしていたら、わたしの前の席の友達、百合がグルンとこちらに向き、わたしの机上にすごい勢いで雑誌を置き、開いた。

「あー、ghostかっこよすぎるわ。見て。紗恵もはやく聴いて欲しい、ハマるよ絶対」

音楽雑誌に、2ページに渡ってメンバー4人の写真が大きく載っている彼ら。ghostというロックバンド。

「はは、かっこいいねー…」

「やばくない!?ギターボーカルのハルさんが一番人気なんだけど、あたし的にはベースのショウさんがたまらない。でね、…」

「ああああ、ちょっとお手洗い行ってくるね!」

百合の、アツい、アツすぎるghost談議が始まる前に、脱出成功。

ghost、人気ロックバンド。

基本的なジャンルはパンクだが、たまにバラードもあり、ジャンルに囚われないスタイルが話題を呼んでいる。

女子高生の大半には、ギターボーカル、後藤ハルのルックス、声がウケているらしい。


女子トイレの洗面台の前でわたしは、ghostについて考えていた。

すると、着信。

「もしもし。紗恵ー」

「ん?どうしたの急に」

「昨日からスタジオにこもっててさ、」

「うん、お疲れ様。がんばれ」

「その…ね、会いたい、から来て欲しい。です。」

携帯電話を耳から離す。
突然甘えられ、声を出さずに叫ぶわたし。が電話している相手。ハル。ghostのギターボーカルのハル。

実はわたし、ハルの恋人なのです。




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