幸福感
その甘え声に心臓持っていかれたことを悟られぬように、わたしはいつもより落ち着いた声にするのです。
「うん、いいよ。いつものスタジオ?」
「そう。着いたら連絡ちょうだい。じゃ、授業がんばれー」
「はーい、じゃあね」
電話を切る。
久しぶりにハルの声聞いたら、次の授業をすっぽかして、いますぐに会いたくなってしまったが、ちゃんとしなくては!
「がんばるのよ紗恵!」
そう決意して、教室に戻ると誰もいなかった。次は美術だということを忘れていた。
美術の授業はゆるいから、ラッキーだと普段なら思うが、この無駄に溢れ出してきた学習意欲、どうしてくれるのだ。
やばい、間に合わない。走る。
チャイムが鳴る数秒前、わたしは華麗にスライディングをしながら美術室に入り、着席をした。