幸せになろう
夏穂は相当がっかりしていた。
その日の夕方、斉木綾香も家に来た。
「宮原君、ちょっと聞いてよ。突然ジェシーっていう人が来て、サラを連れて帰っちゃたの」
慎一はもしかしたらと思い、念のために聞いてみる。
「えっ、綾香ちゃんも?
それで、ジェシーはこんな事を言っていなかったか?
お前は不幸じゃないだろう? だから天使は必要ないって」
うなずく綾香。
「そう言っていた。でもどうしてそれを?」
「やっぱりな。俺の従妹の持田夏穂ちゃんも天使を連れ戻されたんだ。
夏穂ちゃんも同じことを言われたらしいんだ」
「ジェシーは、嫌がるサラを無理やり天上界に連れ帰ってしまったの。
サラ、念願の大学に入れたってあんなに喜んでいたのに……」
綾香は落ち込んだ。
そこで慎一は、エレーナやさやかに聞けば何か分かるかもしれないと思った。
「エレーナ、姉さん、ジェシーが次々と契約を解除させ、天上界に天使達を連れ戻して
いるようなんだ。ふたりとも、何か知らない?」
エレーナ「それは……」
ふたりとももうつむいたまま言葉が出てこない。
ふたりとも絶対何か知っている。でも言えないからには、それなりの事情がある。
そう確信した慎一は、再び天上界に行くことにした。
「エレーナ、姉さん、天上界に連れて行ってくれ。エレガンス幹部に聞けば、
何か分かるはずだ」
天上界、イザベラ幹部自室
「エレガンス幹部、聞きたいことがある。
俺の従妹や友人が、次々と天使との契約を打ち切られている。
本人達の意向とは関係なく、ジェシーが一方的に、天使達を天上界に連れ戻しているようなんだ」
だが、イザベラ幹部の言葉は意外だった。
「私達の役目は、人間界の不幸を取り除く事。
ですから、不幸じゃなければ天使と契約する資格はありません」
「契約する資格がない? それはどういうこと?」
エレガンス幹部がタッチパネルに触れると、統計データが現れた。
それは、人間界の不幸総数を示すものだ。
「今人間界は、不幸で私達の力を必要としている人達が急増しています」
さらに、エレガンス幹部は、不幸総数と天上界の処理能力のデータを比較させた。
「これは!」
慎一は衝撃を受けた。
人間界の不幸総数と天上界の処理能力にはあまりにも大きな開きがあったのだ。
「全ての天使達の能力をフルに使っても、不幸の増加に追いつけないのが現状です。
この数字はあくまでも私達と契約した人間の不幸件数のみですから、
その日の夕方、斉木綾香も家に来た。
「宮原君、ちょっと聞いてよ。突然ジェシーっていう人が来て、サラを連れて帰っちゃたの」
慎一はもしかしたらと思い、念のために聞いてみる。
「えっ、綾香ちゃんも?
それで、ジェシーはこんな事を言っていなかったか?
お前は不幸じゃないだろう? だから天使は必要ないって」
うなずく綾香。
「そう言っていた。でもどうしてそれを?」
「やっぱりな。俺の従妹の持田夏穂ちゃんも天使を連れ戻されたんだ。
夏穂ちゃんも同じことを言われたらしいんだ」
「ジェシーは、嫌がるサラを無理やり天上界に連れ帰ってしまったの。
サラ、念願の大学に入れたってあんなに喜んでいたのに……」
綾香は落ち込んだ。
そこで慎一は、エレーナやさやかに聞けば何か分かるかもしれないと思った。
「エレーナ、姉さん、ジェシーが次々と契約を解除させ、天上界に天使達を連れ戻して
いるようなんだ。ふたりとも、何か知らない?」
エレーナ「それは……」
ふたりとももうつむいたまま言葉が出てこない。
ふたりとも絶対何か知っている。でも言えないからには、それなりの事情がある。
そう確信した慎一は、再び天上界に行くことにした。
「エレーナ、姉さん、天上界に連れて行ってくれ。エレガンス幹部に聞けば、
何か分かるはずだ」
天上界、イザベラ幹部自室
「エレガンス幹部、聞きたいことがある。
俺の従妹や友人が、次々と天使との契約を打ち切られている。
本人達の意向とは関係なく、ジェシーが一方的に、天使達を天上界に連れ戻しているようなんだ」
だが、イザベラ幹部の言葉は意外だった。
「私達の役目は、人間界の不幸を取り除く事。
ですから、不幸じゃなければ天使と契約する資格はありません」
「契約する資格がない? それはどういうこと?」
エレガンス幹部がタッチパネルに触れると、統計データが現れた。
それは、人間界の不幸総数を示すものだ。
「今人間界は、不幸で私達の力を必要としている人達が急増しています」
さらに、エレガンス幹部は、不幸総数と天上界の処理能力のデータを比較させた。
「これは!」
慎一は衝撃を受けた。
人間界の不幸総数と天上界の処理能力にはあまりにも大きな開きがあったのだ。
「全ての天使達の能力をフルに使っても、不幸の増加に追いつけないのが現状です。
この数字はあくまでも私達と契約した人間の不幸件数のみですから、