幸せになろう
「いじめは、私のクラスだけじゃないの。他のクラスや学年でも発生しているの。
先生が目を離したときに起きるの」
夏穂が状況を説明。
「いつもこうなの?」
「以前はこんなにひどくなかったんだけど」
「それで、先生達には言ったのか?」
慎一は、念のため聞いてみた。
「そんなこと言えないよ。先生に言うと仕返しされるから」
「じゃあ、先生達は何も知らないのか?」
「多分」うつむきながら答える夏穂。
はたしてそうであろうか? 先生達も、もしかしたら少しは知っているかもしれない。
だが、知っていたとしても十分に解決しきれていないのだろう。
そして、学校全体でどれだけいじめがあるのかまでは、把握しきれていない。
潜在的ないじめは他にもまだあるかもしれない。
「ルーシー、研修中でも契約は出来るか?」
「正規は出来ませんが、仮契約なら可能です」
「仮契約で十分。紹介が遅れたが、こちらは研修中の新人天使ルーシー・ウェールズさんだ。
ルーシー、俺の従妹、持田夏穂ちゃんの力になって欲しい」
「分かりました。では何をすれば?」
「夏穂ちゃん、ルーシーと仮契約だ。
以前、君がいじめられたとき、俺がやったように願い事をするんだ。
いじめをする奴、見て見ぬふりをする連中がいたら、そいつらに逆にやられる幻覚を見せてやるんだ。
いじめがどれだけ悪い事か分からせてやれ。
人が他人を傷つけるなんて絶対に許されない」
慎一は、夏穂をルーシーと仮契約させた。
「私、お兄ちゃんみたいに出来ないよ」
夏穂は自信がなかった。
「大丈夫、夏穂ちゃんは絶対出来る。君はいじめをなくしたいんだろ?」
「でも……」
「君にはルーシーが付いている。彼女が力を貸してくれる。君にしばらくルーシーを預ける。
ルーシー、夏穂ちゃんのことを宜しく頼む」
そう言うと慎一は独りで家に帰った。彼は、ルーシーに夏穂の事を任せた。
夏穂にいつか、自分の問題は自力で解決出来るようになってほしい。
それに、ルーシーにやらせた方が彼女の研修にもなる。慎一はそう思っていた。
もちろん、ちゃんとフォローはする。ルーシーに丸投げするつもりはない。
ルーシーは困っている人を助けたいという気持ちが人一倍強い。
だから慎一は、彼女を信じてみようと思った。

 何日か経った。ルーシーと夏穂が家に来た。
「それで、どうなった?」
「夏穂さんが勇気を出して頑張ったので、いじめはなくなったんですよ」
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