幸せになろう
「エレガンス幹部が、慎一さんの体調が良くなるまで、エレーナさんとさやかさんを天上界に帰すのを待ってくれることになりました」
「そうか、いろいろとありがとう。それでどうだった?」
「はい、研修は終了することになりました」
「そうか、お墨付きをもらったか。よかったな」
「ありがとうございます」
エレーナとさやかに笑顔は無い。ルーシーの研修は既に終了し、慎一の体調が良くなれば、
もう一緒にはいられなくなる。複雑な気持ちであろう。
 病室のドアが開いた。夏穂と綾香が見舞いに来た。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「宮原君が入院したって聞いて見舞いに来たわよ」
「夏穂ちゃん、綾香ちゃん、来てくれたんだ」
もうすぐ、エレーナもさやかもいなくなる。
それまで、去りゆく時間を名残惜しむように、慎一はエレーナ達といろいろな話をした。
慎一は、なぜか幸せな気持ちだった。不思議と落ち着いていて悲観的な気持ちにはならなかった。
ふたりとも、もうすぐいなくなるのに、なぜか不思議なほどで穏やかな優しい日々が何日か続いた。

 そして、ついにエレーナ達との別れの日が来た。
慎一は、まだ入院したままだった。
慎一は、エレーナ達を集めてこう言った。
「今日はエレーナ、姉さんに渡したい物があるんだ。ルーシー、持ってきてくれたか?」
「はい」
「ルーシーに頼んで、家から持ってきてもらったんだ」
慎一はエレーナとさやかに紙包みを渡した。
「開けてみて」
エレーナは、包みを開けた。
「これは、ネックレス」
「エレーナに似合うと思って買っておいたんだ」
「私のは、エレーナと形やデザインが違うね」
「それは、姉さんに似合うと思ったんだ。ふたりには、今までお世話になったから、俺からの
感謝の気持ちだ。受け取ってくれないか」
「ありがとうございます、慎一さん」
「ありがとう、慎一」
慎一からのプレゼントに喜ぶふたり。
「慎一さん、私からも渡したい物があります。受け取ってもらえますか?」
そう言うと、エレーナは、自分の片方のピアスをはずした。
「このピアスには、私の力の一部が入っています。困った時は、これに強く願って
下さい。私は、いつでも貴方の元に駆けつけます。
これは、慎一さんと私をつなぐ大切な物です」
「ありがとう、大切にするよ」
 
 ジェシーが、エレーナ達を迎えに来た。エレガンス幹部も一緒だ。
「慎一、エレーナ、さやか、ルーシーの研修ご苦労様でした。
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