幸せになろう
その時、ふわっと何か温かいものが慎一をやさしく包み込んだ。
エレーナだ。気がつくと彼女の翼が慎一をやさしく抱きしめていた。
「初めて会った時、私は貴方の中にある、深い悲しみを感じました。
その悲しみってこれだったんですね」
「エレーナ……」
「私達天使は、人の心の中にある、喜びも悲しみも感じ取るんです。
私は、貴方が正しい清らかな心を持っているから契約しました。
でも、本当はそれだけじゃなかったんです。
貴方の中にある悲しみ。そこから貴方を救いたい。そう思ったから私は、貴方と契約したのです」
エレーナの羽が、慎一をそっと包む。
今までとは違う、温かいやさしい光が慎一を包んだ。
何か気持ちが落ち着くと言うか、安らぐような、そんな光を慎一は感じた。

 それ以来慎一は、あの忌まわしい夢を見なくなった。エレーナのおかげだろう。
それからだった。
慎一とエレーナの関係に微妙な変化が訪れ始めたのは……
ふたりは、互いに相手を意識するようになり始めた。


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