幸せになろう
君がアイドルになるのは、本当は、すごく嫌だったんだ。
なんか、エレーナが俺の手の届かない、すごく遠い人になってしまう気がして。
そうしたらもう一緒にいられなくなる。でも、そんな事言えなかった。
君と一緒にいたい、そんな俺のわがままで君の可能性を奪ってはいけない、そう思ったんだ。
だから、俺は、自分の気持ちにうそをついた。
でもエレーナがこの話断ってくれて正直ホッとした」
慎一は安堵した。
「君とこれからも、一緒にいられるのは、嬉しい……
でもな、嬉しいはずなのに、素直に喜べない。
なんか俺のせいで、君の可能性を摘み取ってしまったみたいで。
君に悪い事をしたような気がして」
「慎一さんは、何も悪いことはしていません。これは、私が決めたことですから。
事務所でスタッフの説明を聞きながらも、ずっと貴方の事を考えていました。
私には、天使として役目があります。だからこうして戻ってきました。
私にとって一番大事な人……
それは、貴方です。貴方をを幸せにすることなんです。
だから、私はこれからもずっと慎一さんのそばにいます」
エレーナのために何が出来るんだろう。何をしてあげたら彼女は喜ぶんだろう。
エレーナのために何かしたい、役に立ちたい、
慎一は自分ためにそこまでしてくれたエレーナのために何が出来るのか考え始めた。
「そうだ、エレーナ。芸能界に入らなくてもアイドルになれるよ」
「え?」
「俺だけのアイドルになってほしいんだ。それじゃだめかな」
慎一が照れながら言う。
「はい、私、慎一さんだけのアイドルになります」

 そして数日後、綾香がエレーナの様子を見に来た。
「エレーナ、スカウト断っちゃたの?」
「はい。私、慎一さんだけのアイドルになったんです」
「え? 宮原君だけのアイドル?」
綾香は、一瞬慎一の方を見てニヤリと笑った。
「じゃあ、私はエレーナのファン第2号になるね」
「はい。ありがとうございます」
「宮原君だけのアイドルか……でもなんか、すごくもったいない」
綾香は溜息をつく。
「その芸能プロの名刺、良かったら私がもらってもいい?」
「別にいいですけど」
「エレーナの代わりに私が受けてみるね」
その後斉木綾香は、エレーナがスカウトされた芸能プロダクションのオーディションを受けることに。

 何日かたった。
「ところで、オーディションどうだった?」
審査の結果が気になる慎一。
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