幸せになろう

第６話 契約取り消し

　天上界、契約管理官のジェシー・クリスタルが、業務を行っている。
「何だ、この契約は？」
妙な契約を見つけたジェシー。彼女はその内容をあらいなおした。
不適切と思われる契約は、天上界の幹部会にも報告された。
「不適切と思われる契約が見つかりました」
「これは、重大な契約違反です。ただちに人間界に飛び、契約の取り消しを
させなさい。違反者は連れ戻すように」
契約内容を確認した幹部は、そう命じた。
ジェシーは、人間界に向かった。そしてたどり着いた先は、
「ここか。不正契約があったとされる場所は」
降り立った場所は、宮原慎一宅である。
そして彼女は、家の中へ。
そこでは、エレーナが、家事をこなしていた。
「エレーナ・フローレンス、今日は、お前に用があって来た」
「ジェシー・クリスタルさん、お久しぶりです」
「エレーナ、誰か来たのか？」
人の気配を感じた慎一が、隣の部屋から出て来た。
「この人は？」
「はい、天上界で、人間と天使の契約内容を管理する業務を行っている、
ジェシー・クリスタルさんです」
ジェシーは、エレーナと服が違った。
エレーナはロングドレス、ジェシーは、ミニスカート。
天使服と呼ばれる正装は、白を基本として何種類かあるようだ。
「お前が、宮原慎一か？　エレーナ、慎一の契約内容には重大な不正行為が認められた。
お前達には、今すぐ契約解除してもらう。
それからエレーナ、お前はただちに天上界に帰ってもらう」
「どうして帰らなければいけないのですか？」
「幹部会からの命令だ」
「ちょっといいかな。言っている事が全然分からない。きちんと訳を説明してくれないか」
慎一が口をはさんだ。
「では、天使召喚術は使えるのか？」
「何、天使召喚術って？」
　慎一は逆に聞き返した。
「出来ないなら違反だ。他にも違反はある。とにかくエレーナを天上界に連れ戻す。
これは、幹部会で決まったことだ。行くぞ」
ジェシーは、エレーナの腕をつかんだ。
「ちょっと待って下さい。放して下さい」
エレーナが拒んだ。
「待ってくれ、エレーナを放してくれ」
「だめだ」
ジェシー・クリスタルは、慎一の制止を振り切り、嫌がるエレーナを無理やり連れて帰ってしまった。

　行ってしまった。
慎一は、突然の出来事にぼう然と立ち尽くすしかなかった。
エレーナを取り戻さなければ。
でも、自分の力じゃ天上界には行けない。