幸せになろう
その契約のせいでエレーナ・フローレンスは、
ヤクザの首領、黒埼から不当な要求をされ、ひどいめに遭わされた。
今のやり方を続ければ、エレーナのような被害者が、続出するであろう。
最悪の場合、犠牲者が出ることだってありうる。
俺は、エレーナを悪人達から救うために、仮契約を結んだ。
これは、正当かつ適切な行為だ」
慎一の話が終わると、幹部達の表情が変わった。
隣の席、そして向かいの者同士、幹部達がざわめき始めた。
「宮原慎一、エレーナがひどい目に遭わされたというのは本当ですか?
もっと詳しく聴かせて下さい」
幹部3が真剣な表情になった。
慎一は、今まであった事を全て話した。
そしてさらに、こう続けた。
「不正行為については厳しいが、仲間がどんな扱いを受けているかは、何も知ろうとしない。
それでは指導者として相応しくない。
貴方達のせいで、エレーナは、ひどい目に遭わされたんだ」
慎一は、幹部達を厳しく批判した。
「裏付けが必要です。ジェシー、エレーナの過去の契約者を調べなさい」と幹部3。
わざわざ裏付けを取るのは、幹部達が慎一の主張を認めたくないからに他ならない。
たかが人間ごときに、天上界の規則について干渉されたくないという思惑が透けて見える。
だが、その幹部達の思惑とは裏腹に、
「既に裏づけは取れています。二人の契約に疑問を感じたので、私が独自に調査しました」
ジェシーは、幹部達に調査結果の資料を提示した。
幹部達に緊張が走った。中には、動揺を隠せない者もいる。
「まさか、こんなことになっていたとは……」
幹部2は、資料を持つ手が震えて止まらない。
人間の契約者から契約管理システムの不備を指摘されるとは、
天上界幹部会からしてみれば、敵国の軍隊から自国の安全保障の欠陥を指摘されたも同然だ。
天上界に激震が走った。幹部達はもはや、自己保身どころではない。
幹部達は、再び議論を始めた。しばらくして、幹部達の激しいやり取りは、終わった。
どうやら、話がまとまったようである。
やがて幹部の一人がこう言った。
「宮原慎一、貴方の証言の裏付けが取れました。エレーナをここに呼びなさい」
隣の部屋の扉が開き、エレーナが姿を現した。
「エレーナ」
「慎一さん」
ふたりは互いに再会を喜び合った。
その幹部が慎一とエレーナの前に出た。
「私は、天上界幹部会のイザベラ・エレガンスです。
< 25 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop