幸せになろう
エレーナ、宮原慎一。今回は、契約管理システムの不備や特別な事情を考慮して、天使召喚術を使わなかった事、相手を選んで契約をしたこと、これらを不問にします。
慎一、エレーナを助けてくれたこと、心から感謝します。
ふたりで人間界に帰ることを許します」
互いに手を取り合って喜ぶふたり。
「ありがとうございます」
エレーナが礼を言う。
「但し、条件があります」
穏やかだったイザべラ幹部の表情が少し厳しくなった。
「条件って?」
慎一が聞き返す。
「その場限りの仮契約を繰り返すことは、認められません。きちんと、正規の契約をすることです」
エレーナが契約の儀式を始める。
「本契約発動、宮原慎一!」
今までの仮契約とは違う、大きな光がふたりを包んだ。
「宮原慎一、エレーナの事を頼みますよ」
イザべラ幹部は、エレーナを慎一に託す。
「あの、それと、契約管理システムの改善は出来ないだろうか?
天使召喚術にとらわれない、相手を自由に選べる契約を。
もし、不適切な相手の場合、契約拒否、または解除出来るようにしてほしい」
慎一はイザべラ幹部に制度改善を求めた。
「我々も、エレーナの件は深刻に受け止めています。契約管理システムの改善に努めます」
この時慎一は、イザべラ幹部を話せる相手だと思った。
こうして、慎一とエレーナは、無事人間界に帰ることが出来た。

 ふたりが、家にたどり着いたとき、既に明方になっていた。
「慎一さん、幹部達相手に、あれだけ物を言ったのは、多分貴方が始めてですよ」
「聴いていたのか?」
「私、隣の部屋で全部聴いていました。すごくカッコよかったですよ」
慎一は少し間をおき、こう言う。
「俺は、人が他人を不幸にするのは、一番許せないんだ。
それが、人間であろうとなかろうと。そして、それを放置することも。
俺は、これからも自分が正しいと思った事を主張し続ける。
たとえ、目上の人であっても」
「慎一さん……私、やっぱり慎一さんと契約して良かったです」
エレーナは微笑む。この一件でふたりの絆は、さらに深まったのだ。



< 26 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop