幸せになろう
第7話 喪失
慎一には三浦という親友がいる。
その三浦が入院したので、慎一はたびたび見舞いに出掛けるようになった。
そんな、ある日のことだった。
突然慎一の両親が、帰って来た。
子供の頃、喧嘩別れして以来、十二年ぶりの再会だ。
慎一は、戸惑った。両親と、どう接していいか分からない。
姉、さやかの死をめぐり激しく両親と対立した過去、そしてよみがえる怒りと憎しみ。
両親の突然の帰宅は、嵐の前触れを予感させるものであった。
慎一は、両親とまともに口が利けなかった。
父、総一郎は、エレーナの姿を見るなり、
「何だね、君は? 勝手に人の家にあがりこんで」
不快感をあらわにした。
そして、慎一がエレーナと暮らしていることを知るなり激怒した。
「慎一、こんなよその女を連れ込んで。勝手な行動は許さんぞ。早くその女を追い出せ!」
父さんこそ、十年以上自分の息子を放ったらかしといて、
今更のこのこ帰ってきて勝手放題言いやがって。
慎一は、総一郎のあまりにも身勝手な振る舞いに腹が立った。
エレーナは、一人だった慎一を、ずっといたわり続けてくれていたのだ。
そう簡単に追い出される訳にはいかない。
更に総一郎は、こう言った。
「お前に大事な話がある。父さんの会社は今、大変忙しいんだ。
人手が足りないんだ。お前も手伝え」
なんて勝手な父親なんだ。身勝手過ぎるにもほどがある。
一度は俺を捨てたくせに、自分の都合で利用するつもりか。
慎一は、怒りを抑えるのが精いっぱいだった。
「慎一さん……」
エレーナは慎一を心配した。
両親は、エレーナの顔を見るたびにきつく当たり散らすようになった。
それから数日後、三浦が死んだ。
皮肉にも、さやかと同じ病気だった。
かなり前から入院し、早期治療していたが助からなかった。
三浦の葬儀に出かけた夜、慎一が帰宅するとエレーナの姿が見当たらない。
「あの女なら出て行ったよ」
エレーナがどこに行ったか聞く慎一に対し、総一郎は、まるで他人事のようだ。
「嘘だ、エレーナが自分から出て行く訳ない。父さん達が無理やり追い出したんだろ」
「まったく、あんなどこの馬の骨とも分からん女連れ込みやがって」
総一郎は、慎一の留守を狙ってエレーナを追い出したのだ。
うかつだった。エレーナも葬式に連れていくべきだった。
慎一はひどく後悔した。だかあとのまつりだった。
姉、さやかの死をめぐりで大喧嘩して以来、両親は慎一の全てが気に入らない。
その三浦が入院したので、慎一はたびたび見舞いに出掛けるようになった。
そんな、ある日のことだった。
突然慎一の両親が、帰って来た。
子供の頃、喧嘩別れして以来、十二年ぶりの再会だ。
慎一は、戸惑った。両親と、どう接していいか分からない。
姉、さやかの死をめぐり激しく両親と対立した過去、そしてよみがえる怒りと憎しみ。
両親の突然の帰宅は、嵐の前触れを予感させるものであった。
慎一は、両親とまともに口が利けなかった。
父、総一郎は、エレーナの姿を見るなり、
「何だね、君は? 勝手に人の家にあがりこんで」
不快感をあらわにした。
そして、慎一がエレーナと暮らしていることを知るなり激怒した。
「慎一、こんなよその女を連れ込んで。勝手な行動は許さんぞ。早くその女を追い出せ!」
父さんこそ、十年以上自分の息子を放ったらかしといて、
今更のこのこ帰ってきて勝手放題言いやがって。
慎一は、総一郎のあまりにも身勝手な振る舞いに腹が立った。
エレーナは、一人だった慎一を、ずっといたわり続けてくれていたのだ。
そう簡単に追い出される訳にはいかない。
更に総一郎は、こう言った。
「お前に大事な話がある。父さんの会社は今、大変忙しいんだ。
人手が足りないんだ。お前も手伝え」
なんて勝手な父親なんだ。身勝手過ぎるにもほどがある。
一度は俺を捨てたくせに、自分の都合で利用するつもりか。
慎一は、怒りを抑えるのが精いっぱいだった。
「慎一さん……」
エレーナは慎一を心配した。
両親は、エレーナの顔を見るたびにきつく当たり散らすようになった。
それから数日後、三浦が死んだ。
皮肉にも、さやかと同じ病気だった。
かなり前から入院し、早期治療していたが助からなかった。
三浦の葬儀に出かけた夜、慎一が帰宅するとエレーナの姿が見当たらない。
「あの女なら出て行ったよ」
エレーナがどこに行ったか聞く慎一に対し、総一郎は、まるで他人事のようだ。
「嘘だ、エレーナが自分から出て行く訳ない。父さん達が無理やり追い出したんだろ」
「まったく、あんなどこの馬の骨とも分からん女連れ込みやがって」
総一郎は、慎一の留守を狙ってエレーナを追い出したのだ。
うかつだった。エレーナも葬式に連れていくべきだった。
慎一はひどく後悔した。だかあとのまつりだった。
姉、さやかの死をめぐりで大喧嘩して以来、両親は慎一の全てが気に入らない。