幸せになろう
「お前、何しに戻ってきた?」
慎一の両親は、相変わらず、エレーナを拒絶した。
「慎一さんが、大変なんです。川に落ちて流されたんです」
「たかが川に落ちたぐらいで何だ。子供じゃあるまいし、そのうち戻って来るだろう」
助けをもとめるエレーナに対し、総一郎は、まるで他人事のような態度だ。
母、和江もかかわりたくない様子だ。
エレーナはかっとなった。
「慎一さんが、川で死にかけているんですよ。親として何も感じないんですか」
エレーナは、ショックだった。
彼女は、いつか慎一が言っていた「俺の親は大変自分勝手だ」という言葉を思い出した。
慎一の両親はあてにならないと感じたエレーナは、天上界へ向かった。
そして、イザベラ幹部に泣きついた。
「イザベラ幹部、慎一さんが川で死にそうなんです」
エレーナは、慎一が川でおぼれたことなど、今までの経緯を話し、イザベラ幹部に助けを求めた。
「落ち着いて、エレーナ。慎一はまだ生きています。
契約管理システムにはまだ、慎一の生命反応があります」
イザべラ幹部は、契約管理システムの端末を操作して見せる。
「宮原慎一を救うには、一つだけ方法があります。
それはまず、貴方が最も信頼出来る別の人間を見つけ出し、その人と仮契約を結ぶのです。
そして、契約者に慎一が無事救出されることを願ってもらうのです」
イザベラ幹部は、終始落ち着いていた。
「でも、それでは慎一さんとの契約が……」
慎一との契約がなくなることを躊躇うエレーナ。
「今は契約にこだわっている場合ではありません。彼を救うことが先でしょう?
生きていれば、また契約は出来ます。時間がありません。さあ、行きなさい。
今、慎一を救えるのは、エレーナ、貴方しかいないのですよ」
イザベラ幹部は、冷静で適切な助言をエレーナに与えた。
そして、飛び立つエレーナを見送った。
「エレーナ、必ず慎一を救出するのですよ」
エレーナは再び、人間界へ戻った。
エレーナが向かった先は、友人であり、慎一の幼なじみの斉木綾香の元だ。
「綾香さんなら力を貸してくれるかもしれない」
「エレーナ、こんなおそくにどうしたの?」
「慎一さんが川に流されたんです!」
今まであった事をすべて綾香に話した。
「慎一さんを助けるために私と仮契約してほしいのです。どうか慎一さんが、
無事助かるように私に願って下さい。そうすれば、慎一さんは、助かるんです」
 
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