幸せになろう
「その人は関係ありません。危害を加えないで下さい。私が目的でしょ?」
家の奥から天使が飛び出してきた。
「隠れてろって言っただろう」
慎一は慌てて天使を部屋に押し戻そうとする。
「ほう、物分りがいいじゃないか」
黒崎は、天使を連れ戻そうとした。とっさに慎一は、天使を連れて家を飛び出した。
「コラーどこへ行く。奴らを追え!」
黒埼の手下が追って来る。
慎一は天使を連れて逃げた。かなり走った。
「ここまで来れば黒埼達もしばらくは追って来ないだろう。さあ今のうちに仮契約を」
慎一はハアハア息を切らす。 
「はい、でもその前に貴方の名前をお聞かせ下さい。でないと契約が出来ません」
「宮原慎一」
「仮契約発動、宮原慎一!」
彼女が羽を大きく広げた瞬間、激しい光が二人を包んだ。
「おい、あそこにいたぞ!」
黒崎の追手が迫って来た。
「やばい、見つかった」
「早く願い事を……」
「君を黒崎達から救いたい。そして、奴らが二度と悪い事を出来ないようにしてくれ」
再び激しい光が発生し、それは空高く一本の太い柱のようになった。
「もう逃げられないぞ!」
「しまった! 取り囲まれた。何も変わってないじゃないか」
ついに二人はヤクザ達に取り囲まれてしまった。黒崎は、ニヤリと笑う。 
「いいえ、そんなはずはありません」
天使は不思議と落ち着いている。その毅然とした表情からは、絶対大丈夫という自信すらうかがえる。
その時だった。遠くでサイレンが鳴った。
それはだんだん大きくなりこちらに近づいてきた。
「やばい、察だ!」
何台ものパトカーが次々と黒埼達を取り囲んだ。
「黒埼とその手下、殺人未遂、麻薬密輸、銃刀法違反、通貨偽造、その他の容疑で逮捕する」
黒埼一味は全て警察に連行された。
「うそ! 本当に願いが叶ったのか?」
偶然なのか? それとも本当に天使の力なのか? 
慎一はいまだに信じられなかった。ただぼうぜんと黒埼達を乗せたパトカーが走り去るのを見送っていた。
そして、もう一度天使の方を振り返った。
「君、こんなすごい力持っているんだったら、自分で願い事をしたらいいじゃないか」
「天使は自分の願い事は叶えられないんです。だから契約者の力を借りるんです。
天使と人間はお互いに協力し合う、そういう契約なのです」
「天使って結構不便だな。でも、よかったな、あいつら捕まって。これで君は自由の身だ。もう悪い奴らに捕まるなよ」
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