幸せになろう
エレーナは、慎一を抱きしめた。
彼女は、涙ぐんでいた。でも表情は、嬉しそうだった。
「慎一さん、私、やっぱり夕菜さんと一緒の生活は嫌です。
慎一さんと夕菜さんが親しくしているのを見るのは辛いです」
優菜との生活が不安でたまらないエレーナ。
「うん、わかった」
慎一は、何とか出来ないか考えてみる事にした。

 エレーナさんにはかなわないな、ひそかにドアの隙間からふたりのやり取りを
見ていた夕菜はそう思った。
でも、彼女はどこか晴々としていた。夕菜は、身を引く決心を固めた。

 次の日、
「え? 帰っちゃうの?」
「慎一さん、エレーナさん、短い間だったけどお世話になりました。
ご両親にも宜しくお伝え下さい」
そう言って夕菜は、以外にあっさりと帰って行った。
「何か拍子抜けしてしまったな」
「でも、私はよかったです。何かホッとしました。
これでまた、慎一さんとみずいらずですね」
「エレーナ……」
慎一は、エレーナの安堵した笑顔が嬉しかった。
でも、一番ホッとしたのは、慎一自身だったのかもしれない。

 慎一とエレーナの関係は良好だった。この地点では……
だが、その後ふたりの間に亀裂が生じる一大事に発展していく事になろう
とはこの時まだふたりは知る由もなかったのだ。

 
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