幸せになろう
これは、人間界、天上界、さらには全世界の存亡がかかっているのです。
我々だって、このようなことはしたくありません。でも、他に方法がありません」
幹部達にとって苦渋の決断だった。
「かしこまりました」
ジェシーは、他の天使達を引き連れて人間界へ向かった。
慎一の家の前に、続々と天使達が集結した。
「宮原慎一、お前には申し訳ないが、死んでもらう」
「ジェシー、何を言っているんだ?」
「マイナスエネルギーもろともお前を消滅させる。これは、幹部会の命令だ。
今、お前を消さなくては、人間界も天上界もやがてマイナスエネルギーに飲み込まれる。
これは、全世界の存亡がかかっているのだ。
我々だってこんなことはしたくない。だが、他に方法がないのだ」
「ジェシー、自分の言っている事が分かっているのか!」
慎一が何を言ってもジェシーは耳を貸さない。つまり問答無用なのだ。
「お前一人のために、全世界を滅ぼす訳にはいかないんだ。許せ、慎一」
ジェシーは、身構える。
「みんな、いくぞ」
集まった天使達が一斉に能力をため始めた。
「やめて下さい。慎一さんを殺さないで下さい」
エレーナがジェシーにしがみついた。
「放せ、エレーナ、これは全世界存亡の危機なんだ」
「いいえ、放しません! 慎一さんに罪はありません」
「どけ、邪魔立てするな!」
ジェシーは、エレーナを突き飛ばした。
ジェシー達天使の力が最高にたまり、慎一に向かって攻撃しようとしたその時だった。
「おやめなさい!」
イザベラ・エレガンス幹部が、ジェシー達天使の前に立ちはだかった。
「その人を殺してはなりません」
「しかし、イザベラ幹部……」
「慎一を殺したからといって、マイナスエネルギーが消滅するとは限りません。
今はまだ、マイナスエネルギーは、慎一体内の中に収まっています。
だが慎一を殺せば、行き場を失ったマイナスエネルギーは、暴走する危険性があります。
そうなったら、私達の力ではどうすることもできません。
貴方達がやろうとしていることは、危険物の入った容器を破壊し、中身を飛散させよう
としているのと同じことです」
「慎一さん」
エレーナが慎一に駆け寄った。
「少しは、天上界を信じていたつもりだったのに……
許さない。お前ら絶対に許さない。
今、俺の中には、巨大なマイナスエネルギーがあるんだ。
俺が本気になれば、こいつで天上界をことごとく破壊する事だって出来るんだぞ」
と、慎一は吐き捨てた。
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