幸せになろう
エレーナが慌てる。
「嘘々、冗談よ」
綾香は、いたずらっぽく笑って見せた。
「あのう、この人は?」
サラは綾香とは初対面だ。
「こちらは、慎一さんの幼なじみの斉木綾香さんです」
エレーナが綾香を紹介。
「サラさんは、どうして天使になったの?」
「私は、今から二年半前に死んだの。
その後なぜか天使として生まれ変わって、だから久しぶりに人間界に遊びに来たの」
「へぇー」
妙に綾香とサラは、話が盛り上がっている。
そのうちすっかり意気投合した二人は、なんと仮契約までしてしまった。

 サラは、綾香のアパートに一緒に住むことになった。
「綾香さん、今日はお出かけ?」
綾香は大学へ行く準備中。
「大学よ。私、大学生だからね」
「待って、私も行く」
サラは、無理やり綾香の大学について行ってしまった。
「この大学は……」
そう言いかけるサラ。
「どうしたの?」
「いいえ、別に」
サラは、大学を見て回った。
実は、綾香と同じ大学に入学するはずだったサラ。
もし、生きていたら綾香と同じ三年になっていたはず。
ところが、高校卒業直後に死んだので、せっかく受かった大学の合格通知も
手にすることはなかった。
サラは、過去にさかのぼって大学に入学したいと、綾香に代わりに願ってもらい、
それを叶えてしまった。
彼女は、入学後二年半病気で休学していたことにして、一年生として大学に通い始めた。
毎日、綾香と一緒に大学に通っている。
 そんなある日、サラは大学構内である男性を見かけた。
サラは、懐かしさのあまり、その男性に近づいて話し掛けようとした。
だがその時、どこからか別の女性が現れて、そのまま2人で行ってしまった。
サラは、楽しそうな2人を黙って見送るしかなかった。
彼女はひどく落ち込んだ。
「どうしたの?、何か様子が変だよ」
サラの様子がおかしいことに気づいた綾香が、彼女に話し掛けた。
「綾香さん……」
サラさんは、泣き崩れた。
「私、高校の頃付き合っていた人がいた。
今日、大学でその人を偶然見かけたの。
でもその人には、新しい彼女ができていた。
もし私が、死ななかったら、その人のそばにいられたはずだったのに。
私、ショックで……
私が死んだせいであの人にも、悲しい思いをさせた。
あの人にも、いずれ新しい彼女が出来るかもしれない、そんな事は分かっていた。
でも好きな人を他人にとられるのは、すごくつらい」





< 65 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop