幸せになろう
前に会った時よりも体調を悪化させていて。でも、そうなったのは、
私があの人を救うことが出来なかったからなんです」
エレーナは、過去の契約の失敗を悔やみ、自分を責めた。
「もしよかったら、その話、もう少し詳しく聞かせてくれないかな。
嫌なら話さなくてもいいけれど」
慎一は、話すことで少しでもエレーナの気持ちが楽になるならと思った。
エレーナは、ゆっくりと話始めた。

 あれは、今から約2年ほど前のことでしょうか。
私が、慎一さんの2代前の人と契約したときの話です。
天使召喚術によって人間界に呼び出された私が、出会ったのは、
顔色の悪い暗い表情の青年でした。
「始めまして、エレーナ・フローレンスと申します」
「君が天使か。天使って本当に召喚できるんだな」
「はい。私と契約すれば、貴方のどんな願いでも叶えます」
彼の名は藤村直純。
「仮契約発動、藤村直純!」
仮契約が成立したまではよかったのですが……
「では、願い事を言って下さい」
「本当にどんな願いでも叶うの?」
「ええ。どんな願いも叶えます」
「じゃあ、俺を死なせてくれ」
「え?」
「だから俺を死なせてくれって言っているんだ」
その願いは思いがけないものでした。契約者が、自らの死を願っているのですから。
「あの、それは出来ません」
「なぜだ。たった今、どんな願いも叶えるって言ったじゃないか?」
「私達天使は、人間を幸せにするのが役目です。人を殺すなんて出来ません」
私は断ったのですが、
「なんだ、やっぱ出来ないんじゃないか。
最初から、どんな願いでも叶うなんて嘘だったんだ」
「そんなことはありません。私達と契約して、願いが叶って幸せになっている
人達はたくさんいます」
「でも、そうでない人もいるんだろう?」
「それは……」
厳しい指摘を受け、私は反論出来ませんでした。
天使と契約しても、中には幸せになれない方がいるのも事実なんです。
彼は、その幸せになれない方に、自分もなると思ったのでしょう。
私は少しでも彼の役に立ちたいと思い、話を聞く事にしました。
「あの、直純さんは、どうして死にたいと思うんですか?」
「俺は、不幸続きなんだ。病気ばっかりしているし、全然治らない。
だから、病院通いばかりで仕事にも就けない。当然収入はない。
今は親の金で生活をしている。だが、親はいつか死ぬ。
俺はいずれ超極貧生活になって、病院代も払えずに死ぬ。

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