幸せになろう

「よかろう」
「やめろ！それってプライバシーの侵害じゃないか」
「私はただ、病気を治したいという直純さんの願いを叶えてあげたいんです」
「だからそれがプライバシーの侵害なんだって。
誰にだって人には知られたくないことがあるんだ。
お前らはそういうことが分からないのか？」
彼は、私達を激しく拒みました。
「不正契約防止、トラブル解決、その他セキュリティー上の理由などで
どうしても契約者の情報は、必要なんだ。
だが、安心しろ。我々は、業務以外で情報を使うことはない。
だから、契約者の情報は、他人に漏れることはない」
ジェシーさんの言葉にも聞く耳を貸さず、
「うるせー、どうもおかしいと思ったらそういうことだったのか。
世の中にうまい話などある訳ない。お前らなんかを信用しなければよかった。
契約解除しろ！　さっさと天上界へ帰れ！
不幸な人間は一生そのままなんだ。どんなに頑張ったって幸せにはなれない」
契約解除されました。私は直純さんの信用を得られず、
結局、彼を救うことが出来なかったんです。

　私は、後でイザべラ・エレガンス幹部から、願いを読み取る方法を教わりました。
「相手が願いを言えないときは、その体に触れて、願いを読み取れば、
叶える事が出来ます」
「私、そんな方法があるなんて知りませんでした。
私がもっとしっかりしていれば、直純さんを救えたかもしれません」
「無理もありません。貴方は天使として生まれて、まだ２年しかたっていません。
今回、初めての契約でしたね。貴方には契約内容が難しすぎたかもしれません」
イザべラ幹部は、私の失敗をとがめもせずに、優しく慰めてくれました。
私は泣きました。
「エレーナ、決して泣く事はありません。貴方は何も悪くありません」
「でも私のせいで直純さんは……」
「私達幹部の指導力が行き届かなかったせいです。
貴方には、指導教官として先輩天使を付き添わせるべきでした。
エレーナ、藤村直純、御ふたりには、本当に済まないことをしました」
「イザベラ幹部……」
私はただ泣くしかなかったんです。

　「君に、そんな辛い過去があったとはな」
「今日、直純さんと話したら、前より体調が悪化していて、さらに別な病気にも
なっていたんです」
慎一は静かに立ち上がった。
「じゃあ、今から直純さんの病気、治しに行こう」
「え？」
「彼の事が気になっているんだろ？　だったら今から仮契約して治せばいい。