幸せになろう
直純さんがしゃべらなくても、彼の体に触れてその願いを読み取れば、叶えられる
んだろ?」
「それだと、慎一さんとの契約が……」
エレーナは躊躇った。
「契約なんてもう一度やり直せばいい。さあいくぞ。直純さんの所にに案内しろ」
「慎一さん、待って下さい」
慎一は無理やりエレーナを連れ出した。

 藤村直純宅に到着したふたり。
「直純さんは、私を信用していません。きっと嫌がると思います」
エレーナはまだ迷っていた。
「大丈夫、俺が外で待っているから。もし、直純さんが信じてくれなかったら、俺を
呼べ。契約実績のある俺が話せば、少しは信じてくれると思う。
それに君は、あの頃とは違うだろ? 今の君なら絶対出来るよ」
慎一はエレーナの背中を押した。彼女は、藤村の家に入っていった。
「エレーナ、何しに来た。お前を呼んだ覚えはないぞ」
突然押し掛けてきたエレーナに驚く藤村。エレーナは、勇気を出して切り出した。
「今日は、貴方の病気を治しに来ました」
「以前それは出来なかっただろう?」
「あの時は、私が未熟だったせいで貴方にご迷惑をお掛けしました。
でも今度は出来ます。もう一度やらせて下さい。私、以前とは違いますから。
仮契約発動、藤村直純!」
藤村の家の窓から、激しい光が出た。
「エレーナ、今度こそうまくやれよ」
玄関の前では、慎一がエレーナの成功を祈る。
エレーナは強引に仮契約をしてしまった。
「おい、こら、勝手に仮契約するな。放せ!」
エレーナは、藤村の腕をしっかりとつかんだ。
「何をする、放せ!」
藤村は激しく抵抗した。
「いいえ、絶対に放しません。私は、貴方を病の苦しみから救います」
エレーナの真剣な表情に、観念したのか、藤村はそれ以上抵抗しなくなった。
感じます。貴方の苦しみが、そして病気を治したいという強い願いが……
こんなにたくさんの病気と闘っていらしたのですね。
「願い、成就!」
藤村の家の窓から、さっきよりもさらに強い光が出た。
家の外でエレーナを見守り続ける慎一。
「エレーナ、やったか!」
やがて静かになった。
「直純さん気分はどうですか?」
「あれっ? 何か体が楽になった。背中や腰、首の痛みが消えた。
頭痛もなくなった。でも全部治ったかなんてすぐには分からない。
何日かたってみないと分からない」
エレーナが家から出て来た。
「どうだった?」
「願いは叶えました。
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