幸せになろう
「私、そんな規則があるなんて知りませんでした」
彼女は、天上界の規則を知らなかったのだ。
「私達は、そんなこと知っているとばかり思っていたわ」先輩天使1は、呆れはてた。
「どうするのよ。これだけ大勢救ったとなれば貴方、天上界から厳罰にされるわよ」
先輩天使2は、処分をちらつかせた。
「私、どうしよう。処罰されちゃうのかな」

 その後も世間知らずの新米天使達がよく契約の相談に来た。
深夜に突然押しかけてきて寝ているところを起こされたこともある。
「こんな夜中に来るな。昼間にしろ」
「外は、電気のついている建物がたくさんあるから大丈夫かと思ったんですけど」
自分の行動がおかしいという認識はまるでない新米天使。
「あれは、夜勤だ。中には夜更かしもいるが……」
「天上界には昼も夜はありません。だから、交代で寝るんです。
私達は、昼夜関係ありません」
どうやら彼女は、人間界に来ても天上界と同じ感覚のようだ。
「そんな話聞いたことないぞ」
慎一は呆れた。
全く、天上界の幹部達はどういう新人教育を行っているんだ。
世間知らずの新米天使達を次々と送り込みやがって。
俺は、天使達の契約相談役ではない。
天使達は、平気で壁や天井を通り抜けていきなり人の家に入って来るし、
土足でもお構いなしだ。その非常識さに
慎一はしだいに天上界との関わりに疑問を抱くようになってきた。

 「あのルーシー・ウェールズが処分されたそうです。
長期謹慎で、人間界に行くことを無期限に禁止されたそうです」
エレーナが天上界の様子を聞いてきた。 
「あれだけ派手にやったんだからしょうがないよね」
さやかは溜息をついた。
「ルーシーを監督する幹部達は、処分されなかったのか?」
「幹部達は、処分されていませんよ」
「じゃあ、あの時一緒にいた先輩天使2人は?」
「処分されたのは今のところ、ルーシーだけです」
慎一は静かに立ち上がった。
「エレーナ、俺を天上界に連れて行ってくれないか?」
「いいですけど、どうなさるおつもりですか?」
「以前から天使達の行動は引っかかるものがある。だから、幹部達と話したい」
慎一は、エレーナやさやかと天上界へ出掛けた。

 天上界幹部会大会議室。
「久しぶりね、宮原慎一」イザべラ幹部は微笑んだ。
「最近、俺達のところによく契約の相談が来る。この間、ルーシー・ウェールズが来たが、病院でいろいろと問題を起こした。

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