クリムゾンフレイヤ

「赤き力、青き力、全ての力を借りて今無に帰らん!」

『蒼紅《ソウク》』


スカーレットが無属性の詠唱を唱え出したと同時に、何かの小瓶が彼女の顔の横を通り、木にぶつかった。

青と赤の──今まさに紫に変色しようとしているその小瓶が割れ、男と木を汚す……と。


「ヒ、ヒィィアッ!? お、オレの、オレの腕が!?」

「!」


毒のように紫に侵食していく木の下で、同じく腕や足、ましてや身体中を変色させていく男に、スカーレットは目を見開いた。


「な、なに? 瓶?」


液体が入っていたただの小瓶。

だが、それが科学変化か、まったくもって理解出来ないけど、触れれば腐食していくのは確か。


「あーもぅ訳分かんないけど……この魔法。どうしてくれるのよ?」


後ろからの謎の援軍に感謝……はしない。

助けなんて求めてないし、しかもこの貯めた魔力はどうしてくれる?

誰にぶつければいい訳?


「……面倒だから……適当に拡散させちゃう?」


液体が地面を腐食させていくのを確認し、後ろに大きく下がったスカーレットは、魔法を二つに分けた。


「な、なにを……!?」


木の上で待機していた他の四名が、顔をひくつかせて笑うスカーレットを見る。




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