クリムゾンフレイヤ

「………………は?」


しばらくの沈黙があって、青年がようやく口に出来た言葉がそれだった。

何かしら誉めるなり礼を言うなりするだろうと期待していたのに、いきなりの言葉とげんなりした彼女の顔に青年は怒る。


「おまえな! 助けてもらっておいてそれは何だよ!? 何だよガッカリって!」

「そのまんまの意味よ。てか、アタシが何時何分いつ何処で助けてなんて言った? 言ってないわよね?」

「おまっ! どこのガキの言い分だよ!!」


青年の激怒に、スカーレットは肩を竦めて遠くを見る。

それにまた苛立った青年は、咄嗟に手に握っていた風の剣を振り下ろす。


「ちょっと!? 危ない……っ!」


しゃがみ込んでいたために、尻餅をついて風の剣を手で挟み受けとめたスカーレットは、脂汗を額に浮かべて首を横に振る。


「助けてって言われなくてもなぁ、助けて貰ったんだから素直に頭を下げろガキ!」

「なっ! 誰がガキですって! わざわざ頭下げてまで礼何て言いたくないわよ魚目!」

「誰が魚目だ!」


日が暮れ掛けている中で、口論する二人の男女だったが、一向に終わる気配を見せず、スカーレットが剣を抜いた。




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