クリムゾンフレイヤ

「ヘヘッ。ようやく追い詰めたぜ? 嬢ちゃんよぉ?」

下品な笑い方をして、ゆっくりと腰の湾刀に手を掛ける男たち。


その中でも、やけに大柄でスキンヘッドの大男が、部下を避けさせ前に出る。


「嬢ちゃんよぉ。まだ死にたくなんてないだろぅ? 早い話オレらは嬢ちゃんの命なんて欲しくねぇんだ」


顔が見えないせいか、大男の表情は分からない。

が、おかげでこっちの表情も月の逆光で余計分からないから幸いだ。


「盗んだ金品を返してくれさえすれば、オレたちはすぐにここから立ち去ろう。どうだ? ん?」


まるで赤子をあやすような言い方に苛っとしたが、女性はまだ動かない。


口も動かそうとはしない。


「……さぁ。その袋に入った金貨をこっちに渡せ」


一歩近づいて右手を前に出す大男に、女性は笑った。


「……誰が盗んだ金品ですって?」

「…………あ?」


ようやく口を開き、口の端を釣り上げた女性に対し、大男は拍子抜けた声を漏らした。

その瞬間、女性の顔がある光によって照らされる。


「その炎は……!? お前、魔導士か!!」


照らされたと言えど、まだ口元辺りまでしか照らされていない女性に、後ろで構えていた男が口走る。


だが、それはあっさり拒否された。


「ざーんねん。アタシは魔導士なんかじゃないわ」


そう言って、手の平に揺らめく小さな炎の明かりを持ち上げて、女性は目元を緩めた。




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