クリムゾンフレイヤ
『グランゼール町 北東位置 町長の家』
金持ちと言うくらいなのだから、いっそ家が二階、三階建てなのかと思いきや、案外普通の民家だった。
いや、普通と言えば嘘になるか。
縦ではなく横に長い町長の家は、外見はオシャレで、後ろには広い庭があるようだった。
「でも、馬は一匹もいないし……いるのはヒヨコ一匹だけ」
「おまえはどんな家を予想してたんだよ?」
げんなり、ガッカリするスカーレットを横目に、グラガは細い目で呆れていた。
「言っておくが、中も普通だぞ。高級な絵画とか壺なんかないからな」
「先に言うかな? 普通。余計に残念な感じになるじゃない!」
グラガの追い討ちに怒るスカーレットだったが、先に聞いたために、逆に余計な期待などしなくていいから楽になった。
「ホレホレ、早く入らんか」
洋風着物からラフな布服になった町長に案内され、二人は言い合いを止めて中に入った。
「いらっしゃいませ。主人からお話は伺っております。こちらへどうぞ」
突然声を掛けられ、驚いてしまったスカーレットだが、優しそうな女性に導かれて個室に連れて行かれる。
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