クリムゾンフレイヤ
「グラガ様はこちらへ。紅茶を用意しております」
(グラガ“様”?)
手を引かれ、個室へと通される途中で、スカーレットは首を傾げたが、グラガは振り返りもせず早々と消える。
「さぁさ、旅の方。少し冷めていますが、食事も用意しておりますぞ」
「おぉ!」
椅子に座る町長の手招きに招かれ、指差す方向には、豪華な料理の数々が並べられていた。
ダチョウの骨付き肉から、懐かしい味付けがされていそうな煮物など。
スカーレットは歓喜の声を上げて、町長と向かい合うように席に座った。
「酒がいいかな?」
「麦酒(ピア)でお願いします」
町長の言葉に遠慮などしないスカーレット。
麦酒を頼んだ彼女は、先に料理を食べてしまおうと、目の前に置いていたスプーンを手に取った。
「すぐに麦酒が来るじゃろう。その前に……」
骨付き肉を手掴みで握りむしり食べるスカーレットを余所に、町長は席を立って髭を撫でた。
「確かこのへんに……おぉ、あったわい」
狭い部屋に置かれたベットとタンスと、テーブルの間にあった小さな金庫を開けて、町長は微笑する。
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