クリムゾンフレイヤ

その瞬間、リーダーを含めた男たちは後退り、顔を引きつらせた。


「お、おまえは……!?」

「フフン……」


肩口まで伸びた紅髪。
首に付けた騎士のチョーカー。
肩から太股辺りまで降ろした黒いマント。


何より紅を基調とし、縦に金の刺繍と、胸元に入れられた紋章。

そのボディースーツを着た彼女を、知る者なら悲鳴をあげる。


「“盗賊狩りの盗賊”! スカーレット=ノヴァ!!」

「誰が“盗賊狩りの盗賊”よ! というより、誰がそんなの付けたのよ!?」


リーダーの男が悲鳴を上げながら後退りするのに対し、スカーレットは逆に追い詰めていく。


これはいっそ剣を抜き、対抗した方が勝てる?


(有名な“鷹の爪”を潰せれば、それこそアタシの名が上がる? そうすれば他の盗賊からも……!)


そうと決まればやるしかない。そりゃもう、やるしかないわよ!


「我炎弾に使命を与える、炎の弾〈ファイアーボール〉!!」

「な、ちょっと待て────!?」


頭には既に恐怖や敗けではなく、金銀財宝と名誉に変わったスカーレットはすぐに魔法を唱えた。

いきなりのことで対処が出来なかった──しかもバカみたいに前に陣取っていたために、リーダーの男は炎弾を直接身体に食らって、悲鳴を上げた。




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