クリムゾンフレイヤ
「昨日か? あれはなぁ……」
グラガの言葉が途切れた。
と、同時に少し顔が綻びる。
何というか……変態っぽく。これは何かしら企んでる顔だとも取れた。
──案の定、グラガはとんでもないことを言い出したのだ。
「確か魔王さんを倒した暁には、オヤジの金貨500と魔王さんの財宝を貰う代わりに……俺との婚約を結──!?」
結ぶと言おうとしたのだろうが、このスカーレット様がそんなこと言わせるはずがない。
えぇ、もう力の限り腹を蹴ってやったわ。
「な、なにすんだよ……」
「なにすんだよはこっちのセリフよ。え? アタシがいつ何処で何時何分そんなこと言ったのよ!」
「だ、だから昨日の夜に部屋で……」
「フンッ!」
端から見ればただの漫才に近いこのやりとりを、アタシはうんざりするほど付き合ってやった。
「あ、ぐっ……」
「で? 昨日アタシは何言ったの?」
頭や腹やとボコボコに殴ったせいか、グラガは疼き悶絶してるが、アタシは無視して続ける。
けど、グラガは諦めなかった。
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