クリムゾンフレイヤ

「さっき言っただろぅ? あのまんまの通りだ」

「意地でも貫き通すつもり?」


腹を抱えながらも、アタシの問いにグラガは頷いた。

……我ながら思うけど、こんな女の何処がいいんだが。


(……呆れるわ)


まだアタシは19歳の可憐な少女よ?今からが青春なのよ?

譲歩しても、顔が良くて金持ちで優しくて強い好青年なら、アタシだって頷くわ。けど!


「……なんで死んだ魚の目をしたイケメンでもなく微妙な顔で、しかも実力もないただの金持ちと結婚しなくちゃならないのよ!」

「めちゃくちゃ言うなよ! 地味にてか、本気で傷付くわ!」


指を差して力強く言い切ったアタシに、グラガが猛烈にツッコんだ。

いや、間違えた。訂正。

……すごい顔でツッコんだ。


「一緒じゃねぇか! おまえバカか!?」

「バカとは何よ!! 言わなくても分かるだろうけど、アタシはアンタより何百倍賢い女よ!」


茶色のロングコートを叩いて、グラガは冷静に立ち上がる。

それをアタシはもう一度蹴ってやった。……が、


「調子に乗るなよ。魔王を倒さないなら、さっさとこの町から消えろ。金貸も渡せねぇ。破談だ」


蹴りを片手で受け止められて、グラガは眉をひそめた。




< 32 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop