クリムゾンフレイヤ
「ちなみに、その傭兵ってのは誰?」
「胸の大きい綺麗な姉ちゃんじゃったよ」
アタシは名前を聞いたつもりだったのに、変態──いや、町長さんは鼻の下を伸ばして答えた。
「いやいや、格好とか姿じゃなくて名前よ。名前」
「あー…………」
問い直したアタシに対し、町長さんは髭を撫でて思い出す。
……そのまま5分。
「おいおい、覚えてないんじゃ……」
「やかましい! さっき会ったんじゃから、ちゃんと覚えておるわい」
グラガの怪しいと言う目線に負けず、町長さんが思い出し始めてから、早10分。
「わかった。町長さんはその女の人の胸しか見てなかったって訳ね」
「あー、いや! 違う! 違うんじゃよ」
痺れを切らして肩を竦めたアタシに、町長さんは脂汗を滲ませて首を横に振ったけど、もう遅いわよ。
「さてと、で? アタシたちは城に行けばいいのよね?」
「へ? あ、あぁ、そうそう! アルカイド城まで徒歩になってしまうが、三日もあれば着くじゃろう」
チッ、やっぱり徒歩か……。
わざわざ馬車なんて出してられないわよねー。
分かってる。分かってるんだけど……。
「どうにかならない?」
「何をだよ?」
心の中で呟いたことは、さすがにグラガまで分からないか。
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