クリムゾンフレイヤ

「あとは、盗賊対策ね」


そう言ってスカーレットが取り出したのは、文字が刻まれた小さな小石。

その小石に術を唱え、魔力を込めていく。


「蒼き焔よ、我が身を守りし盾となれ!」


肌を切り裂くような静電気の痛みが一瞬グラガを襲い、スカーレットは苦笑した。


特殊な魔術の系統で、世間一般的にはこれを《ルーン魔術》と呼ぶ。

小石に書かれた様々なルーン文字を用いて、焔や湖(ホノウやミズ)を発生させる魔術。

攻撃や身を守る盾、特殊な効力をもたらすとして重宝されている。


「おまえ、ルーン魔術も使えるのかよ?」

「当たり前よ。こんなの朝飯前よ?石させあればね」


グラガの感心に、スカーレットは自慢することなく手を振ったが、確かに彼女の言う通り。

貴重とされているルーン文字が刻まれた小石は、安くて一つ5〜10金貨必要とされている。

成金でケチなスカーレットにとって、ルーン魔術を使うことを、普段は躊躇っているのだが……。


「今回は特別よ。次の町についたら、また買えばいいんだし」


身を守るためなら仕方ない。

自分さえ良ければいいが、一応、百歩譲って仲間なのだから……守ってあげるしかない、




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