クリムゾンフレイヤ
「さて、次はアンタに働いてもらうわよ?」
もうすぐ月が顔を出そうという頃……スカーレットは不敵な笑みを浮かべて腰に手を当てた。
その言葉と顔で、今にでも逃げ出したいグラガは、空笑いをして後退りする。
「な、なにさせるつもりだよ?」
「大丈夫よ。そんなに構えなくても……ちょこっと獲物をやっつけて欲しいだけだから」
「獲物?」
不安気なグラガに微笑して、青年の後ろを指差したスカーレットは、手を振って蹴り飛ばした。
逃げられなかったグラガは、当然その蹴りをくらい結界から強制的に出てしまう。
『グォォォオ……』
「あ、えっ? なっ!?」
仰向けに綺麗に倒れたグラガの目の前には、黒々とした獣が一匹────。
その巨体を生かし、力任せに腕を振り上げた獣に、グラガは悲鳴を上げた。
「ぬぉぉおっ!? スカーレット! テメェ!!」
横に転がり難を逃れながらも、再び危機に陥るグラガは、錬金をする暇もなくスカーレットに怒る。
だが、ついにはそんな暇も無くなってしまった。
「ちょい待て! 錬成するまで待たんか!!」
「おぉ、さすがあの爺さんと親子。喋り方似てるよ!」
「るせぇ!」
焦る余り変な言い回しになってしまったのを、傍観しているスカーレットに指摘され、半泣きになるグラガ。
それでもお構い無しに、モンスターと思われる獣は追い掛けて来る。
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