クリムゾンフレイヤ

「さて、次はアンタに働いてもらうわよ?」


もうすぐ月が顔を出そうという頃……スカーレットは不敵な笑みを浮かべて腰に手を当てた。

その言葉と顔で、今にでも逃げ出したいグラガは、空笑いをして後退りする。


「な、なにさせるつもりだよ?」

「大丈夫よ。そんなに構えなくても……ちょこっと獲物をやっつけて欲しいだけだから」

「獲物?」


不安気なグラガに微笑して、青年の後ろを指差したスカーレットは、手を振って蹴り飛ばした。

逃げられなかったグラガは、当然その蹴りをくらい結界から強制的に出てしまう。


『グォォォオ……』

「あ、えっ? なっ!?」


仰向けに綺麗に倒れたグラガの目の前には、黒々とした獣が一匹────。


その巨体を生かし、力任せに腕を振り上げた獣に、グラガは悲鳴を上げた。


「ぬぉぉおっ!? スカーレット! テメェ!!」


横に転がり難を逃れながらも、再び危機に陥るグラガは、錬金をする暇もなくスカーレットに怒る。

だが、ついにはそんな暇も無くなってしまった。


「ちょい待て! 錬成するまで待たんか!!」

「おぉ、さすがあの爺さんと親子。喋り方似てるよ!」

「るせぇ!」


焦る余り変な言い回しになってしまったのを、傍観しているスカーレットに指摘され、半泣きになるグラガ。

それでもお構い無しに、モンスターと思われる獣は追い掛けて来る。




< 44 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop