クリムゾンフレイヤ
「だけどなぁー。この数を俺だけで無理だしなぁ」
魔術も錬金術も中途半端なグラガに、ざっと数えて五人の相手を同時にするのは無理だ。
倒せる可能性などゼロに等しいほど……。
しかも、当の本人がやる気がないため勝つことは出来ないだろう。
「やっぱ起こすかな?」
睡眠を邪魔されるより、死ぬほどが嫌であろう。
いや、スカーレットならどちらも同じかも知れないが、一発殴られるのと死ぬのとでは、グラガは一発を希望する。
(いや、ホントはどっちも嫌だけどな……)
一人でノリツッコミした所で、不要意にも敵は一人でやってきた。
偵察か? それとも余程の自信があるのか……。
どちらにしても好機だ。
魔術は詠唱が必要だが、グラガの錬金術に基本、詠唱は必要ない。
「……チッ! 結界を張っているのか」
野盗か忍びか、頭から足先まで黒に包み込んだ男は、緑色の円球をみて舌を打った。
(もうちょい来い……。出来ればあと二、三人連れて!)
グラガは眠るフリをして、男たちの動きを伺いながら念じる。
それがまた通じたのだから、面白いものだ。
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