クリムゾンフレイヤ
「ちょっ……!?」
布袋を持つスカーレットに目も暮れず、盗賊と思われる男たちが次々と彼女を追い越して行くのだ。
さすがに驚いたが、すぐに理由がはっきりした。
「スカーレット=ノヴァだな?」
「そーだけど……何の用かしら? 盗賊さん?」
不覚……ではないが、首に湾刀の刃を当てられたスカーレット。
だが、盗賊の手が微かだが震えている。
先手を打った盗賊より、まさに死に直面している彼女の方が強かった。
「ボスは死ぬは金品は強奪されるは……キサマのおかげで《鷹の爪》はとんだ笑い者だ」
「そりゃ大変だったわね。ご苦労様……や、御愁傷様かな?」
「ふざけるなよ小娘が!」
盗賊の男が額に汗を浮かべる中、スカーレットは微笑して煽ったが、掛かった。
怒りに任せて湾刀を振り上げた瞬間を狙い、一気に身体を反転させてスカーレットは足を振り上げた。
狙うは一直線!
「下が隙だらけよ!!」
「な──っ!?」
大きく振り下げた湾刀は空を切り、男は顔を歪ませ下を──地面を見る。
が、スカーレットの狙う場所はその下ではない。
「痛いけど我慢ね!」
勢いよく男の開いた股目がけて足を強打させたスカーレットに、男は目を見開き顔を青く染めた。
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