クリムゾンフレイヤ

だが、夕暮れの反射を利用して光に満たされた街並は、見事なものだった。


入り口から目の前に見えるのは、つねに虹が薄らと架かる丸い噴水。

その噴水を中心にして、左右に分かれ開いているのは、武器屋から食材屋まで多数だ。

もちろんその後ろには、様々な花や木々が立ち並んでいる。


(……まっ、明るさなんてどっちでもいっか)


主婦や街中の人々が楽しそうに雑談し、買い物をして、子供ははしゃいでいる。

それだけで、魔術士など関係なくこの街は平和なんだと、スカーレットは感じ取れた。


「……もうそろそろ酒場が開くんじゃねぇか?」

「アンタも酒飲むのね。あー、でも安い麦酒がいいから飯屋ね」


6時を過ぎ、グラガが少々胸を躍らせて言うが、スカーレットにはぶどう酒が飲めないために却下された。

が、今回はどうやらグラガは退かないようだ。


「いや、酒場の方がいい。飯屋なんか野郎がゴタゴタしてるだけじゃねぇーか!」

「野郎がゴタゴタしてても、安いならそっち! お金も無限じゃないんだから、無駄使いしてると城まで持たないわよ」


街について早々に火花を散らす二人。

その様子を見ていた一人の若者が、二人に向かってゆっくりと近付いて行く。




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