クリムゾンフレイヤ

「ここに酒場はないよ。あるのは飯屋とバーだけさ」

「バー?」


突然言われた言葉に、首を傾げる二人。

『バー』という聞き慣れない単語を聞いたせいだろう。

爽やか青年は微笑すると、教会の方を指差した。


「世界各国から取り揃えた酒やワインが集まる、高級な酒場みたいなもんさ。ここの街の人は、皆バーに行くよ」


青年の丁寧な説明に感心する二人だが、高級という言葉に引っ掛かったスカーレットは、もちろん首を横に振る。


「酒場より余計ダメじゃない! グラガ、今回は諦めなさい」

「……マジかよ」


余計なこと言うなよ……と、グラガの目が青年を睨む。

これで説得せずに済んだわ!……と、スカーレットの目が嬉しそうに青年を見るから、青年は苦笑いするしかなかった。


「さて、行く場所も決定したことだし。早速──」

「待ってください!」


グラガの気が変わらないうちにと、早々に歩きだすスカーレットのマントを、青年が素早く掴んで制止する。


「僕があなたに話し掛けたのは、別の要件です! ……これを」

「あぁ、もう何よ?」


一気に機嫌が悪くなるスカーレットは、青年が懐から取り出した一通の手紙をひったくった。




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