クリムゾンフレイヤ
その差出人の名を見て、彼女が固まったのは気のせいだろうか?
「何々? 差出人は……“フレイヤ=アルマニス”。聞いたことねぇな」
名前からして女性だろうか……。グラガは首を傾げ、手を顎に当てて唸りを上げる。
「……うん。ありがとう。今日は……宿屋に行こっか」
「へっ? 何言ってんだよ。飯屋で腹ごしらえするんだろ? まさか、それすらも金出したくないとかか?」
ものすごく珍しいスカーレットの反応につい笑ってしまい、グラガは思いっきり突いてみる。
が、いつもなら「違うわよ!」的な怒声を浴びせる癖に、今回は違った。
「あー、うん。そう。宿屋のご飯でいいじゃなあ? お酒は明日でもさ?」
本当に、気味の悪いくらいスカーレットが大人しいことに、グラガは顔を引きつらせた。
「お、おい大丈夫か? 頭でも打ったか? 気分は?」
本気であたふたと心配するグラガの言葉に、少女は身体を震わせて苦笑いを浮かべた。
「あー、大丈夫。うん。でもちょっと寒気と殺気がするのは気のせい──」
「それはきっと気のせいじゃないわね? スカーレット=ノヴァ」
スカーレットの身震いが一瞬大きな動作になり、不意に聞こえてきた女性の声に、ゆっくりと顔だけ振り返る。
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