クリムゾンフレイヤ
ピンッと爪先を立たせ、泡を吹き出し男は倒れこんで悶絶した。
身体をクネクネする姿に呆れながらも笑え、スカーレットは苦笑いしながら、ついに我慢出来ずに笑ってしまった。
だが、それもすぐに強制的に止められた。
「動くな」
殺意という名の脅しがたっぷり入れられたその言葉を背中から聞き、スカーレットは顔を強張らせる。
しかし、強張らせたのは一瞬だ。
背中に突き付けられたナイフをもろともせず、彼女は勢いよく振り替える。
「また股蹴りでも──」
「同じ手が通用すると思うに小娘! お前の動きは既に把握済み……!?」
瞬間的に振り替えり、再び左足を引いたスカーレットに、別の男はナイフを手前に引いて身体を半歩遅らせる。
「掛かったわね」
その言葉を彼女から聞くまで、男は自分の過ちに気付かなかった。
スカーレットが狙ったのは、確かに股蹴りかもしれない。
それは範囲内に男が入ればの話だ……範囲内から抜ければ取る手段は一つ。
「古より伝わりし炎の理──今我に力を貸せ」
「ま、待て! 魔法だけは──!!」
「もう遅い! 円炎《サークルファイア》!!」
ナイフでは範囲内から一度抜けると、足の反発力だけではすぐに攻撃に切り替えることが出来ない。
それを利用したスカーレットの炎魔法に、男は絶句していた。
男を綺麗な円が包み、その円が徐々に縮まりながら炎が広がり、一気に破裂するように爆発する魔法。
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