クリムゾンフレイヤ
「……おぃ、あの女。何するつもりだ?」
高い木から見下ろすように様子を眺めていた盗賊の男たち。
スカーレットの悩む姿を捉えながらも、俯いて足を忙しなく足踏みしていたのに、突然ピタリと止めたことに驚いていた。
「………………」
数分して、スカーレットが取った行動は……。
「あ、あの女! 何処に行きやがるんだ!?」
ズンズン道なりに歩いて行くスカーレットの姿に、男は思わず木から滑り落ちそうに────、
「のあぁっ!?」
……情けない声を出して地面に落下した。
そんな情けない忍び服の男に、スカーレットは唇の端を上げて足を止める。
「火はあまり使いたくないからー……水がいい? 風? それとも無?」
不敵な笑みを浮かべて早足で落ちた男に駆け寄ったスカーレットの言葉に、男は足をバタつかせながら首を振った。
が、何を勘違いしたのか。
男が首を振ったのは横ではなく、縦。
「ふーん。無属性希望ね、了解いたしました!」
「ち、違う! 誰が無属性を──!?」
縦に振ったつもりはなくとも、縦に振ったように見えたのだから仕方がない。
スカーレットは、慌てすためく男の制止を無視し、詠唱を唱える。
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