愛の果実-エリートなあなた短編集-


足早に秘書課へと戻った私。そして、ドアに一番近い席で今日も電話を取らずにいる問題児のデスクの前に立つ。



「何のために秘書になったの?」

もちろん笑顔を浮かべていたが、この場に居合わせた後輩ちゃんたちは気づいているらしい。


――珍しくブリザードを引っ提げて戻って来た私、イコール超不機嫌であると。



その空気を分かっていないのは、ただひとり。私が対峙する、リップを塗り直している呑気な新人だ。


「ええー?秘書って響き、男の人からウケが良いじゃないですかぁ。
だからわたし、ここ希望したんですよねー。
あ、今日って定時に終わりますよね?絶対に外せないコンパなんでぇ」


悪びれることなく答えやがった新人。居合わせた後輩ちゃん共々、さすがに呆れてものが言えなかった……。


 * * *


「あー、ムカつく!」

こうして色々思い出すと、さらに苛立ちへと繋がっていくだけだ。


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